里親インタビュー＃４　Sさん

里親になったきっかけを教えてください。

夫婦とも、結婚する前から同じ幼稚園で働いていました。その幼稚園に通っている子どもたちの中には宗教や国籍など様々な背景を抱えている子どもたちがいて、ずっと気になっていました。その後に勤めた保育所でも、困っている子どもや保護者が多くいました。その時は里親制度の知識もなく、どうしようもできない状況で心苦しかったです。仕事を退職したことをきっかけに、児童相談所に電話して自分たちが何か子どもたちのために手伝えることがないか相談しました。その時の児童相談所の担当者が里親制度についてくわしく説明してくれて、登録に至りました。

里親を始めるとき、ご家族や周りの反応はどうでしたか？

登録した当初は夫婦と高齢の夫の母の３人暮らしでした。夫の母は子どもが家にいると元気が出て、相手をしてくれていました。近所には高齢の方が多いのですが、里子を預かると皆さんとても喜んでくれました。里子と一緒に近所を散歩をすると、近所の方がおやつを用意して待ってくれていて、声を掛けてくれました。

はじめて子どもを迎えたときの思い出を教えてください。

（里父）かわいいばかりでした。とにかくかわいかった。最初に来た赤ちゃんがあまりに小さくて抱くのが怖かったのですが、すぐにかわいくて仕方がなくなりました。その子が他の場所に行くことになり、お別れの時にはその子の幸せを願い、「幸せになれよ」と声をかけ続けました。

（里母）登録してすぐに新生児がやってきました。夫は首の据わっていない赤ちゃんのお世話に不安があったようでしたが、子どもが好きなのでとてもかわいがっていました。お別れの時には夫はその子の幸せを願って「幸せになれよ」と声をかけ続けていました。これまで３０人以上のお子さんを預かってきて、どの子も思い出があるけれど、今でもその時の光景が忘れられません。

実際に里親になってから感じたことはありますか？

（里父）里親をして初めて、施設で生活をしている子どもがとても多いことを知りました。そういった子ども達のために、自分が動けるうちは役に立ちたいです。

（里母）どんなに大変な思いをしてきた子どもでも、わが家での暮らしが落ち着いたころに「お父さんはね、お母さんはね」と両親の良いところを話し出します。里親になった頃は、わが家で預かる子どもを幸せにしたいという思いが強かったのですが、今はできるだけ親元から離さないことが大切だと感じています。辛い思いをしている親子を地域で支えたいと思うようになったのは、里親として色々な子どもたちに出会えたことが大きいです。

子どもとの関係性の中で大切にしていることを教えてください。

（里父）預かる子どもは小さい子が多いけれど、他人に対しての思いやり、人にやさしい人になって欲しいということを意識して育てています。それと、ここにいる間「よかったなあ」と思って過ごしてほしいと思っています。

（里母）わが家にくる子は短期間の預かりが多く、一緒に過ごす期間が決まっているため、無駄な時間は１分１秒もありません。みんな親元などに帰っていくけれど、預かっている間はその子にがむしゃらに向き合いたいと思って愛情を持って接しています。そうすることで子どもたちは自然に「愛されている」という感覚が身についていくと思います。

里親制度の重要性はどのように考えていますか？

「１８９」（児童相談所虐待対応ダイアル）やオレンジリボンの周知が広がることによって、虐待で苦しんでいる子どもたちが救われるのはとても良いことだと思います。でも中には、子どもを泣かせたら虐待通告をされるのではと思って追い詰められているお母さんが多いことも最近感じています。制度だけでは子どもたちは幸せになれません。子どもの幸せを第一に考える仕組みを社会のみんなで考えていくことが必要ではないでしょうか。

里親になることを考えている人へメッセージをお願いします。

いきなり里親じゃなくても、まずは自分にできることから始めたらいいと思っています。例えば、特別なことじゃなくても、子ども連れの親子に「かわいいね」と声をかけるだけで、お母さんは笑顔になります。それだったらすぐにできるし、こちらの何気ない言葉でも親にとっては嬉しいものです。

そして、もし里親をやろうと思う方がいたら、「いっぱい愛せばいいよ」と伝えてあげたいです。里親が子どもを育てるのではなく、子どもが里親を育ててくれます。子どもからは得るものしかないですし、幸せもたくさんもらえますよ。